Filed Under (2-6.親子の信頼関係) by 秋月 秀一 on 17-02-2010
第2章の6
よい土は、水が吸い込まれるようにしみ込む。
〜(4)信頼関係をつくる
水はけがよく柔らかい土は、植物にとって理想的な環境です。
根をしっかりと張り、土壌の栄養分を十分に吸収することができます。
よい土に水をやると、瞬く間にしみ込みます。
私が子どもの頃に夢中になっていたボール遊びを、近所の子どもたちに教えて一緒に楽しもうとしたことがありました。しかし、ルールの説明を始めるとすぐに子どもたちの表情は曇り始めました。そして、話を始めたばかりなのに「分からない」「難しい」など否定的な反応がありました。
「そんなに難しくないから」と私が言うと「バカだから、分かんないよ」と突っぱねられてしまいました。
たとえ遊びであっても、難しそうなことに耳を貸そうとしない態度、自分には理解できないという思い込みは、現代の子どもにありがちな傾向です。
話を聞く事ができずイライラする子は、まるで水やりをしても土にしみ込まない「乾いた大地」のようです。
その時は実際にボール遊びをしながら、ルールの説明をしました。時間はかかりましたが、なんとか一緒に楽しめました。やってみると「なんだ簡単じゃん」と子どもたちから拍子抜けするような反応がありました。
後日、私から別の遊びを教える機会がありました。前回と同様に、子どもたちは説明を聞くのが面倒そうでしたが、いくらか態度は柔軟になりました。
子どもたちの姿勢に変化を感じたのは三回目でした。それまでの態度とは一変して、遊びに興味を持っているのは明らかでした。ルールを説明していると「それはこういうことなの?」と質問がありました。今度は水が、すーっと土にしみこむように内容を理解しました。
「この人は、自分たちが知らない面白い遊びを教えてくれる」「大人だけれど、一緒に遊ぶと面白い」という前回の経験から、子どもたちと私の間に信頼関係ができたのだと感じました。
家族の間でいつも意識しておきたいことが「信頼関係」です。
【楽育】では、親子の信頼関係のために、次のような環境をつくります。
(1)大人が子どもに嘘をつかない環境
(2)家族の愛情が伝わる環境
大人の嘘は、なんとなく雰囲気で子どもに伝わるものです。そこで大切なのは嘘をつく必要のない「場」を意識することです。
たとえば、わが家ではテレビで小さな子どもに見せたくないシーンがある番組は録画をしておき、親子で一緒に見ることはありません。また、子どもの前で大人が話をする時は、その内容に気を配ります。子どもが疑問を持ち、大人が嘘の回答をしなければならないような状況を作らないようにします。
子どもが相手であれば、その場しのぎでごまかしたり些細な嘘をついた方が楽なことがあります。
たとえば、子どもが「ジュースが欲しい」と言った時に「ジュースはない」と嘘をついて諦めさせる方が手間がかかりません。一方で「ジュースは、ダメ」と言えば、子どもが泣いたり騒いだりして面倒なことになります。
しかし、そこでは子どもを説得して諦めさせるように努力することが大切です。嘘をつかないことで子どもに我慢させることになりますが、それは長い目で考えれば本人のためになることだと思います。
大人が子どもに嘘をつくことで信頼関係は損なわれ、子どもの心に反感の種をまいてしまうのです。
親子の信頼関係が築かれていれば、子どもは親から叱られた時にも、それが自分のためであると理解できるようになります。
けれども、反感の芽が根づいた子どもは、親の言葉に聞く耳を持ちません。
家族の愛情が伝わる環境をつくることは、親子の信頼関係を築くことです。
家族が愛情を伝える家の子どもは、人の気持ちになって考えることができます。一方で家族からけなされたり、バカにされる家の子どもは、人を傷つけるようなことを平気で口にするようになります。
「自分のことを大事に思っている」と家族が感じられるようにするには、どうすればよいでしょうか?
私は愛情を言葉で子どもに伝えるように意識しています。
外国の映画やドラマでは、登場人物が家族に「I LOVE YOU」という言葉で愛情を伝えるシーンがよくあります。残念なことに私たち日本人は、言葉で愛情を伝える習慣がありません。また、急に愛情を伝えようとしてもうまくいきません。
しかし、赤ちゃんの頃から声をかけて愛情を表現していれば、素直な思いを伝えられるものです。
娘が保育園の時、ほかの子と同じようにボール遊びができなくて落ち込んでいたことがありました。
そこで娘に「ボール遊びができなくても、おまえは、パパの宝物だよ」と言って励ましてやりました。
それを聞いた娘は「宝物」という言葉を嬉しそうに繰り返し
その笑顔は本当に輝いて見えました。

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Filed Under (1-7.夫婦の信頼関係) by 秋月 秀一 on 11-02-2010
第1章の7
アジサイの色は、土の性質で変わる。
〜「育児に必要な夫婦の信頼関係と共通認識」
梅雨時期の風物詩として、私たちの気分を爽やかにしてくれるアジサイ。
古くは万葉集にも詠まれ、現代も多くの日本人に親しまれています。
アジサイは、土壌がどのような環境であるかによって色が変わります。
土の性質がアルカリ性に近ければ赤みがかり、酸性に近ければ青みがかります。
日本では酸性の土壌が多いため、青色のアジサイがよく見られます。
子どもは、育つ環境によって様々な影響を受けます。
そして、環境を左右するのが親の存在です。
「親がどのように育てるか」「親がどのような人であるか」によって、子どもの性格や行動は変わります。
「どのように育てるか」では、親が自らの経験から学んだ価値観が育児に反映されます。
子どもに対して責任感のある親は、子どもが真っすぐ育つように望み、そのためにできることを実行します。
一方で責任感のない親は、子どものことに無関心です。
人間は男女に関係なく「父性」的な面と「母性」的な面を持っていると言われます。
「父性」の強い親は、社会のルールや責任感を身につけさせるために子どもを「しかる」ことができます。一方で「母性」の強い親は、子どもを優しく包み込むように「ほめる」ことができます。
平成20年秋に放送された「土よう親じかん秋スペシャル」(NHK教育テレビ)では、
「ほめる育児」について特集されました。番組のために現役東大生と現役Jリーガーの各一〇〇人に「親からどのように育てられたか?」という調査が行われました。
それによると《東大生は親からほめて育てられ、Jリーグの選手たちは親から叱られて育てられた人が多数を占める》という結果になりました。
現代の育児では「ほめる」ことが推奨されています。しかし、強い心を持つたくましさの芽を育むためには「叱る」ことも必要であることが分かりました。
育児には「父性」と「母性」の両方が必要であると言われるように「ほめる」育児と「しかる」育児は二者択一ではありません。状況に応じて使い分けることができるのです。
「ほめる」ことができるから「叱る」ことに意味があり、
「叱る」ことができるから「ほめる」ことに喜びがあります。
「親がどのような人であるか」は、子どもの様子を見れば分かります。
いつもイライラしている子どもの親は、短気でストレスを抱えているようです。
一方で、落ち着きがあり聡明に見える子どもの親は包容力があり、ゆとりを持っているように思います。
「親がどのような人であるか」は、個人の性格や行動ばかりが重要ではありません。
夫婦の関係が子どもに与える影響は多大なものです。
【楽育】では、夫婦の信頼関係がしっかりしていることや、夫婦が育児に共通の認識を持つことを大切に考えています。
子どもから見て「お母さんはほめてくれるのに、お父さんは何も言わない」。
「お父さんは叱るのに、お母さんは無関心」では、大事なことが子どもに伝わりません。
たとえば、母親が子どものしつけで厳しく接している時に、父親が「まぁ、いいじゃないか」と適当に甘い顔をすることがあります。さらに、ここで父親が母親を非難するような態度をとると、パートナーの努力が台無しになります。
こんな時に父親は、どうしたらよいでしょうか?
私ならば、叱られた子どもの気持ちを受け止めながら、母親の考えを自分の価値観と言葉で子どもに伝えてやります。
子どもは叱られると、それだけで頭の中が真っ白になります。
「叱られて、つらかったね」と第三者が声をかけてやることで、子どもはホッとします。そると緊張がほぐれて、よく耕した土のように頭が柔らかくなり、水がしみ込むように親の話を理解することができます。
現代の育児では、母親の孤独が問題になっています。
「夫が育児に手を貸してくれない。大変さを理解してくれない」という母親からの声は絶えることがありません。仕事から帰ってテレビやゲームで自分の時間を楽しむ夫を、子どもの前で「何もしてくれない」と非難する妻もいます。すると、夫は「朝から晩まで働いて家族の暮らしを支えいるのに、なぜなんだ?」と反論し、喧嘩なることもあります。
夫婦の言い争いや責任の押し付け合いで、子どものためになることは1つもありません。
私が新入社員として広告会社で働き始めた頃、不思議に思っていたことがありました。
それは、幼い子どもがいる先輩が、仕事後もまっすぐ家に帰ろうとしないことでした。
ある日、その理由を聞いてみると「会社でドロドロになったまま家に入れないから、酒を飲んで清めてから帰るんだ」と寂しそうに語ってくれました。
日常生活では父親にも母親にも大変なことがあります。それは、どちらが大変かの競争ではありません。ふたりは「育児」という大切な目的を共有するパートナーです。相手を信頼し、共通の認識を持つようにお互いが努力すべきです。もし、相手が「何かをしてくれない」と感じることがあれば、まず自分の働きかけについて考えてみる必要があります。
イソップ寓話に「北風と太陽」という物語があります。
《ある日、北風と太陽が、旅人の上着を脱がせることで力くらべをします。最初に北風が大風を吹かして旅人の上着を脱がそうとします。しかし、旅人は寒さでますます上着を押さえ込んでしまい、服を脱がせることはできませんでした。
次に太陽がさんさんと旅人を照りつけました。
すると旅人は暑くなったために、自分から上着を脱ぎました。》

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