10歳までの楽育〜第4章の6

雑草が出たら、早めに抜き取る。

〜「子どもの悪い芽を摘む習慣」


梅雨時期を迎えると庭の雑草も勢いを増してきました。「まだ、芽を出したばかりだろう」と気を抜くと、すぐに辺り一面が雑草だらけになります。雑草が大きくなった時には、根を深く張っているので抜くのが大変です。また、雑草は成長するのが速いので、すぐに植栽している花の苗を追い越してしまいます。そのために日陰になった花の苗は雑草との生存競争に負て、最後には覆い尽くされてしまいます。
雑草は根が浅いうちならば簡単に抜けるので、小さいうちに抜く習慣をつけます。

【楽育】では、子どもの健全な成育を阻む「悪い価値観」を「雑草」に例えています。「悪い価値観」と「雑草」には、次のような共通点があります。
(1)知らないうちに芽生える。(2)大きくなるのが早い。(3)対処するには根気が必要。
育児においても、雑草を見つけてすぐに抜くような習慣が大切です。
幼い子どもは人を模倣することで物事を覚えます。よいことならいくらでもマネて吸収して欲しいものですが、そうとばかりは限りません。

四国新聞社が香川県の高校生を対象に行なった「少年非行調査」によると、高校生の23%が万引きを経験していました。万引きを始めた時期は小学生が約5割、中学生が約3割と低年齢化が目立ちます。万引きのきっかけは「欲しかった」が約4割、「誘われた」が約2割、「みんなしているから悪くないと思った」が約1割でした。
我慢ができない欲望もさることながら、誘われて断れない、人のマネをして安易に犯罪に手を染める人が多いことに驚かされます。本人がよほどしっかりした価値観を持っていなければ、友だちの悪い影響力に負けてしまうのです。

娘が幼稚園の友だちと夏祭りに出かけた時のことです。友だちとその弟との間で喧嘩がはじまりました。幼い弟が姉の持っていた赤いヨーヨーを欲しがったことがトラブルの原因でした。姉は弟をたしなめるように軽く叩く素振りを見せました。すると横にいた私の娘までも面白半分に友だちの弟を叩いたのです。普段から「人を叩くことは悪いこと」と教えていても「やってみたい」という衝動には勝てませんでした。私は娘を呼んで、自分が何をしたのかを問いました。すると「○○くんが、悪いことをしたから叩いた」と言い訳をしました。
「悪いものは裁かれて当然。悪を裁いた者が正義である」という間違った価値観を娘は持ってました。どこからか「雑草」の種をもらい、親の知らないうちにそれが心に根付こうとしていたのです。
このように子どもに悪い芽が出たときは、すぐにその場で注意して理解させることが重要です。
「こんな事くらいで注意しなくても・・・」と親が放置していると、悪い価値観は雑草のごとく大きくなります。
そして、気がついた時には、万引きなど非行に走っていることがあります。すると次第に大人の言うことに耳を貸さなくなり、やがて親や教師の手に負えなくなります。

古代ローマの哲学者 キケロはこう言いました。
《いかなる悪も つぼみのうちは容易に押しつぶせるも、
成長するにつれてよりいっそう強くなる。》

【楽育】では、子どもの悪い芽を見つけて、できる限り早く摘むことを習慣にします。
そのために必要なことは、子どもの話をよく聞いて様子を知ることです。

私は娘から悪いことについての話しを聞く時は、それをどう思うかを質問したり、自分が被害者になった時のことをイメージさせるようにしています。
そして、両親の人生経験で足りない部分は本を読むことで補っています。

わが家では夕食の後で、繰り返し一冊の本を読んでいます。
それは、世界的な大ベストセラーとなった『あたりまえだけど、とても大切なこと』(ロン・クラーク著)の50のルールを子ども向けに編集した『みんなのためのルールブック』という本です。
「だれかとぶつかったらあやまろう」「勝っても自慢しない、負けても怒ったりしない」など、この本に書かれているルールを毎日1つづつ読みます。
そして、その内容について親子で話し合います。
また、時には本の内容をテーマに、人形を使って劇で実演する「ドールプレイング・ゲーム」を行ないます。娘が自分の人形を使って様々な役を演じることで、他者の気持ちをリアルな感覚として理解できるように心がけています。

「雑草」は、抜いてもまたすぐに生えてきます。悪い価値観も友だちやメディアを通じて、いくらでも子どもの心に種をまきます。
悪い価値観の種が心にまかれたら「またか・・・」と諦めることなく、私は何度でも同じことを子どもに言い聞かせます。
そのことで自分の価値観が、子どもに根づくと信じています。

ある人は雑草を防ぐために、庭をコンクリートやビニールシートで覆ってしまいます。
けれども、私にはそのことが理解できません。
それは、雑草が生えない庭では、美しい花や緑もまた、
楽しむことができないからです。



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