10歳までの楽育〜第4章の5

水やりは、まとめて出来ない。

〜「子どもに愛情を伝える習慣」


ガーデニングの基本は、毎日の水やりにあります。
昔から「水やり3年」と言われるように、植物の状態を見ながら水やりを行うことは難しく、大事な作業とされています。
水やりは、暇がある時にまとめてしても意味がありません。水をやり過ぎると加湿で根を傷めて腐らせ、水が少なくて土が乾きすぎると、枯れる原因になります。
水やりは毎日行なうことが大切なのです。

【楽育】では、子どもの様子を見ながら、水やりをするように毎日愛情を注ぐことを習慣にしています。それを積み重ねることによって親子の信頼関係を築くためです。
一度にまとめて愛情を与えようとすれば、一時の喜びを与えることができます。しかし、それが親子の信頼関係に繋がることはありません。
なぜなら、信頼は一度にではなく、ゆっくりと築かれるものだからです。

子どもへの愛情は優しく接する面と、厳しい接する面があります。子どもと楽しい思い出ばかりを作ろうとすれば、厳しさは陰を潜めて優しさが中心の愛情になりがちです。
子どもと十分な時間を過ごしている母親とは対象的に、休日にしか子どもと接する時間がない父親には、特にこの傾向があります。
平日の父親は会社で残業したり、仕事関係の付き合いで帰宅が夜遅くなることが珍しくありません。帰宅して子どもの寝顔を見てほっとするのが精一杯という人も多でしょう。
このような父親にとっては「休日くらいは、子どもの笑顔を見て過ごしたい」というのが本音です。それゆえに子どもに厳しく接して欲しいという話は酷でもあります。「自分がガミガミ言わなくても、いつも家内がやってくれているだろう」と、パートナーに育児を依存したい気持ちも分かります。
しかし、それでは子どもの成長の芽を伸ばしてやることができません。

休日の公園に行くと、まるで子どもの従者であるような父親に出会います。子どもは父親に向かって「おとうさん、手が届かない、上に持ち上げて」「おとうさん、水筒持ってて!」と次々に要求を投げかけます。
また、母親さながらの口調で父親を顎で使う子どもがいます。「おとうさん、のどが渇いた。ジュース買ってきて。早く、行ってきてよ!」。父親は不満げな表情でぶつぶつ呟きながらも、結局は子どもの言いなりです。

ある時、子どもが公園の遊具の高い場所で危険な遊びをしていました。それを見た父親が「おーい、危ないよ」と声をかけました。それにもかかわらず、子どもは「へっちゃら、へっちゃら」と知らんぷりでした。そして父親が次に口にした言葉に私は、耳を疑いました。「言うこと聞かないなら、もうDVD、買ってやらないからなぁ」。
これで、本当に危険だという真剣味が子どもに伝わるでしょうか?
その時はモノを買ってもらえないから仕方なく危険な遊びをやめますが、次は親が見てないところで同じことをするに違いありません。
モノを与えて子どもに言うことを聞かせると、それが悪い習慣として根づきます。
そしてついには、モノがなければ親は見向きもされない存在になってしまうでしょう。

「大事に思っているから、危険なことはして欲しくない」というメッセージを、親から子どもに伝えるにはどうすればいいのでしょうか?
私ならば、まず大きな声で「危ないから、すぐやめろ」と叫びます。
そして、安全なところに降りてきたら「落ちたらどうなる?その時、パパとママはどんな気持ちになる?」と子どもに問いかけます。
怒っているのではなく、危ないから止めて欲しいという強い気持ちを優しく伝えるように努力します。
最初は不満そうな表情を見せるかもしれませんが、親との信頼関係があれば、子どもは最後には納得してくれます。

ところが、日頃から信頼関係がなく、親への反発心をもった子どもの場合は「危ないからやめろ」と言っても、その言葉を無視します。
自分が親から大切に思われていることを子どもが実感しているからこそ、親の言うことに耳を傾けられるのです。

子どもは、大人に自分の話を聞いてもらうのが大好きです。平日に仕事が忙しい人ならば、残業の合間に家に電話をして、ちょっと子どもと話をするだけで心を通わせることができます。家庭からは父親の携帯電話へ写真とメッセージをeメールで送り、見てもらうこともできます。
また、親子でお手紙の交換をする方法もお勧めです。帰宅して母親から子どもの話を聞いた後で、今日お父さんは、こんなことがあったよ。幼稚園ではどんなことがあったのかな?ということを手紙に書きます。それを母親に預けておけば、子どもは喜んで返事をくれます。文字が書けないうちは、母親が代筆してあげてもいいでしょう。

いつも子どもの事を気にかけることで、親子の信頼関係が生まれます。
子どもは「親から見守られている」と感じ、それが心に安定をもたらします。すると、他人の気持ちを理解し、優しく接することができるようになります。

水やりに使う「じょうろ」の先端は、小さな穴がたくさん空いたハス口と呼ばれる構造になっています。
ハス口は、水流を弱めて、流れをシャワー状にすることで、植物を傷めることなく水やりを行なう工夫です。
愛情は「じょうろ」を使って水やりをするように
優しくゆっくりと与えるものなのです。

  前のページヘもどる