10歳までの楽育〜第3章の13

風で倒れないように、植物は支え合う。

〜「共助力の種まき」


ほっそりとした茎の先にスカイブルーの美しい花をつける矢車菊を植えてみました。しかし、高台のわが家では、すぐに強風で倒れてしまいました。背が高い植物は風に弱いと言われます。
そこで、同じ背丈の植物の近くに植え変えました。すると、お互いを支え合って倒れにくくなりました。

人と人は支え合いながら生きています。しかし、私たちは現代の日常生活で、そのことを忘れてしまいがちです。
「共助」とは、お互いに助け合うことです。
私が子どもだった頃には、世の中に「甘えるな」という風潮がありました。そのためか「人に甘えることは惨めなこと。人に頼ることは恥ずかしい」という価値観をずっと持っていました。
しかし、社会に出ると会社では上司を頼る人が可愛がられ、得意先を頼る人が信頼され、部下を頼る人が成果を上げていました。
何でも自分一人で考えて解決する姿勢は、効率が悪いばかりか、組織力を低下させることにもなりかねません。
そして家庭では、夫婦や親子がお互いを頼らないという関係は、見えない壁をつくる原因にもなります。人はいちばん近くにいるから、大事だからこそ自分を信じて頼って欲しいと思っているのです。

人に甘えるのではなく、頼ることができる人。
人に甘えさせるのではなく、頼られる人が成功を手にします。
「甘えること」と「頼ること」の違いを、私たちはどうやって子どもたちに伝えれば良いでしょうか?

娘が通っていた保育園の年長組では、通園後に身の回りのことを自分で行ないました。
通園かばんから歯ブラシや弁当、着替えなどを出して所定の位置へ置いてから遊びます。
ある朝、仲良しの子が近づいてくるなり、突然に娘の手から荷物を奪いました。私は何が起こったのかと驚いていると「私がやってあげる!」と言って、娘の代わりに朝の準備を始めました。そして、一人で手際よく済ませると「一緒に遊ぼっ」と娘の手を引きました。早く遊びたい気持ちも、自分がやった方が早いというのも分かりますが、してもらう子の親としてはちょっと困惑しました。
数日後、その子と同じ時間に登園する機会がありました。すると、その子の母親は、そそくさと娘の準備を自分1人で終えるなり、仕事に行ってしまいました。
何か大事なものが置き去りにされているような気がしました。
しばらくして、それは「相手の気持ち」であることに気がつきました。この親子は、相手がどう思っているのかを考えず、自分の都合で「相手にやってあげた」のでした。
「手伝うよりも、自分の手でやってしまった方が早い」。
時間に追われて育児をしていると、そんな場面が多くあります。しかし、親がやってしまうことが本当に子どものためになるのを、立ち止まって考える必要があります。
私たちは「してあげすぎる」ことで、子どもが自分本位になる芽を育てていないでしょうか?人と助け合おうとする心が育たなければ、相手のことを理解したり友情を深めることは決してできません。

【楽育】では、子どもの「共助力」を育むために2つのことを意識しています。
(1)相手の気持ちを第1に考え、敬意を持って接すること。
(2)子どもの意思を確認してから親が手を貸すこと。

私は子どもと接する時に、自分の気持ちを言葉で表現するようにしています。たとえば、子どもが汚い言葉づかいをしたときは「今言ったことは、人をバカにしているようで、嫌な気持ちになった」などと素直に伝えています。
そうすることで、何気ない言葉や動作が相手がどのように影響を与えるかを、子どもに学ばせます。
また、わが家では、相手にお願いがある時は、敬意をもつことを学ぶために、敬語で話すように求めています。
そして、私たち大人もまた、子どもに何かを頼む時には「○○を取ってください」「○○をしてください」など敬意をもって接します。

諸外国では「家事を子どもが手伝うのは、当然のこと」という意識が高いのに対して、日本の子どもは家の手伝いをしない家庭が多いそうです。
わが家では、掃除や食事の準備、草抜きなど家の仕事をする時に、できるだけ子どもと一緒にすることで、「共助力」の働きかけにしています。
それは大人が仕事を子どもにお願いするのではなく、この家に住んでいるならば、互いに助け合うのは当たり前であるという意識で行なっています。
一緒に何かをすると、自分から「○○をやって欲しい」と頼んだり「次は○○をやって」などと頼まれたりします。
すると、自然に相手が何をして欲しいか、自分に何ができるかをイメージできる「共助力」の芽が育ってきます。

ある時期に仕事が忙しくて、子どもと遊べない日が続きました。
すると、仕事部屋をノックして6歳の娘が私のところへやってきました。
そして、こう言いました。
「お手伝いできる仕事があったら、私に言ってね」。



  前のページヘもどる