10歳までの楽育〜第3章の6

ブルーベリーは、2種類を近くに植える。

〜「影響力の種まき」


家庭の果樹として人気が高いのがブルーベリーです。春に白い花が咲き、初夏には甘く熟した実を収穫し、そして秋には紅葉が楽しめます。
ブルーベリーは、違う品種を近くに植えることで受粉が促進されて実つきが良くなります。花粉を運ぶ風や虫たちの影響など、他種の木からの花粉をもらうことで、ブルーベリーの収穫量は増すのです。

幼児期の子どもは、人のマネをして学ぶことが多いものです。子どもにとって自分に影響を与えてくれる人は大切な存在です。また、マネをすることは自己を確立するために必要な過程であると言われます。

娘が5才の夏に「一輪車に乗りたい」と言い出したことがありました。
きっかけは、近所の小学生が練習している様子を見たことでした。私は一輪車の乗った経験がなかったので、上手く教えられる自信がありませんでした。しかし「やって見たい」という子ども意欲を信じて、見守ることにしました。
最初は、まったくダメでした。乗ろうとしてバランスを崩して転ぶたびにハラハラさせらました。「娘にはちょっと、早いのでは?」とか「頭でも打ったら大変だ」と親の方が弱気になったほどです。
しかし、娘は年上の子をマネて、転んでは乗り転んでは乗りを果敢にくり返します。
私はその様子を見た時、「普段は怖がりな子のどこに、こんな力があったのだろう?」と感心しました。
バランスを取るのに手を貸したり、転んだら励ましの声をかけてやるなど一輪車の練習で私にできることは僅かでした。
3週間ほどして上達した娘に「何であんなに一生懸命にできたの?」と聞いてみました。
すると「おねえちゃんみたいになりたかった」と笑顔で答えました。
年上の子が何度も挑戦し、成功した時の憧れが娘の原動力だったのです。

子どもの行動について親が「やる気がない」と嘆くばかりでは、いつまでたっても本人のやる気は湧いてきません。自分自身の内側から意欲が湧いてこなければ上達は望めず、時間の無駄になる場合が少なくありません。
ほかの人からの影響力で、子どもの意欲はかき立てるます。

子どもが人から影響を受けるのは、よい事ばかりではありません。
むしろ、善悪の区別がつきにくい子どもにとっては、悪いことの方が影響を受けやすいといえます。保育園や幼稚園で集団生活をするようになって「子どもの言葉づかいが悪くなった」「態度が悪くなった」という保護者の声は、ごく身近に聞かれます。また、私自身もそれを大いに実感しました。

娘が幼稚園の頃のことです。水田にカエルが顔を出していました。それを見つけた男の子が石を投げ始めました。一緒にいた女の子が「死ねぇ!」と言って石を投げると、すぐに娘も石を手に取って「死ねぇ!」と後に続きました。
子どもにとっては、他愛のないゲームであることは分かっています。また、自分自身の記憶をたどれば、同じようなことをした覚えもあります。それでも、娘の行為は私にとって大きなショックでした。
隣家の犬をかわいがったり、絵本でかわいそうなシーンに心から同情する様子から「生命の尊さ」について知っている優しい子だと思っていたのです。
しかし、実際には違っていました。
娘は「生命の尊さ」を知っているのではなく、それを学んでいる過程にあったのです。

家に帰ってから、その日の出来事を娘と話し合いました。娘は以前に発表会の劇で、101ぴきの子どもたちを外敵から守る「おたまじゃくしのお母さん役」を演じたことがありました。そこで私は、カエル役を演じた時の気持ちを思い出させることから始めました。

【楽育】では、人が子どもに与えている影響がどのようなものかを、しっかりと見極めて行動することが大切であると考えています。
また、子どもの一番近くにいる親が、悪い影響力を凌ぐほどの影響力を子どもに与えてやれる存在であるべきだと思います。
親は偉人やスポーツ選手のように、子どもにとって特別な存在である必要はありません。
子どもと一緒に物事を感じて、考えて、思いを伝えることで影響力の種はまかれます。

これからの人生では、仲間で盛り上がるために「ノリ」を求められることがあります。
時には「悪ノリ」も求められることでしょう。
そんな時、行動する前に一瞬でも立ち止まって考えられる人に育って欲しいと願います。

私たちの影響力の種が、子どもの心の中でたくましく育ち、
悪い影響力から守ってくれるように。



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