10歳までの楽育〜第3章の5

野菜の近くにハーブを植えて、害虫から守る。

〜「交際力の種まき」


キュウリ、ナス、トマトなどを同じ場所に続けて植えると、病原菌が土の中で増えて成育が悪くなり、病気にかかりやすくなります。このような「連作障害」を防ぐために、毎年違う種類の野菜を植えて育てます。
また、近くに植えることで害虫の発生を抑えたり、相手の成長を助ける植物の相性があります。これを「コンパニオンプランツ」と呼びます。
たとえば、バジルとトマトを混植すると病害虫が発生しにくく、トマトの風味がよくなります。また、マリーゴールドは、ジャガイモや豆科の植物の成育を助けると言われます。

現代では、子どもたちの人間関係が狭くなっています。
少子化によって、兄妹、親戚と過ごす機会が減りました。
核家族化によって、祖父母と過ごす機会が減りました。
遊び場や自由時間の減少で、近所の子どもと過ごす機会が減りました。
これにより、子どもが日常を過ごす人は、両親や保育士、先生などの大人と、学校の友だちなど一部の人に限られています。
窮屈な人間関係は、子どもにストレスを与えて「いじめ」を生み出す原因にもなります。
国立教育政策研究所が首都圏で行なった調査によると、小中生の8割を超す子どもが、いじめの被害、加害ともに経験していることが分かりました。現代では、誰でもいじめの被害者、加害者になり得るのです。

【楽育】では、様々な年齢の人と交流して視野を広めるのが、子どもたちにとって望ましいと考えます。
そこで、子どもの人間関係を豊かにする「交際力」の種まきをします。

まるで「コンパニオンプランツ」のように素晴らしい出会いが、成功した例があります。
娘の友だちの母親に高齢者介護の仕事をしている人がいます。その人は土曜日に職場へ子どもを連れて行き、施設の高齢者と交流をさせています。お年寄りに優しく接してもらえて子どもが喜び、相手からも「お子様から元気がもらえました。自分と一緒に楽しんでくれることが嬉しい」と喜ばれているそうです。
私たちは自分の日常が多忙であるために、子どもに「早くしなさい、ちゃんとしなさい」と指示を出すことが多いものです。
一方で高齢者は時間にゆとりがあるので、相手の行動を待つことができます。また、私たち親世代とは全く違った価値観を持っています。豊富な経験に基づく知恵、古き良きものへの敬意、大らかさなどは、子どもたちに素晴らしい影響を与えてくれます。

わが家で行なっている「交際力」の種まきは、できる限り友だちの輪を広げることです。
幼児期の子どもは、一人の友だちと親しくなるよりも、多くの人と出会って様々な価値観を学ぶことが大事だと思います。
そこで、学区の外へ多くの友だちをつくれるように親が働きかけています。
娘は演劇鑑賞を行なうサークル、ジャズダンスの教室、高齢者が昔遊びを教えてくれる塾などに所属しています。どれも学校の友だちとは違うメンバーで年齢も様々です。
そこで年上の子のマネしたり年下の子の世話をして、娘なりに交友関係を深めています。

ある日、幼稚園で娘にとって大きな事件がありました。今まで大切な友だちだと思っていた女の子から、何の理由もなく仲間はずれにされたのです。家で話を聞いた私は「すぐ仲直りできるよ」と励ましましたが、娘の涙は止まりませんでした。
そこで私は、思いつくままに「友だち地図」を作ることを提案しました。まず大きな紙の中央に円を書き、娘の名前を入れました。そこから放射状に線を引いた先に円を書き、友だちの名前を書き入れていきました。幼稚園、サークル、保育園、近所の子、ダンス、いとこなどのグループごとに友だちの名前をたくさん書きました。
「友だちの地図」が完成すると、私にはもう何も言うべきことがありませんでした。娘は友だちの輪の中にいる自分を、しっかりと実感していました。
それからは、友だち関係が原因で泣いたりすることがなくなりました。
人からきつく言われても、うまく受け流しができているようです。

子どもの心は不安定です。昨日の友だちが今日の友だちではないことが普通です。また、人に合わせなければ自分が仲間はずれにされると思っていたり、自分の居場所がどこにもないと感じている子どもがたくさんいます。

西洋の諺に《すべての卵をひとつの籠に盛るな》という諺があります。 卵を同じカゴに入れて歩くと、落とした時に全部が割れてしまうので、分散しておくことが望ましいという意味です。

たくさんの出会いが、子どもの心を強く支えてくれると私は信じています。
野原の花々が風に吹かれて、そっと互いを支え合うように。



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