10歳までの楽育〜第3章の3

名前を知るだけで、その花を好きになる。

〜「共感力の種まき」


雑誌で紹介されていたハーブの苗を偶然に見つけ、店頭で衝動買いをしました。名前を知ったことで、きっと親近感が湧いたのでしょう。
そのハーブについてネットや図鑑で調べると、半日陰で水はけの良い場所を好み、肥料はやや多めに必要なことが分かりました。土をつくり無事に植栽を終えた頃には、開花を待たずして、その花が好きになっていました。
名前を知ったことをきっかけに興味を持ち、好感を持ったのです。

相手の気持ちになって考える力、それが「共感力」です。
他人に共感できる子は、いじめをしません。
友だちに共感できる気持ちは、友情を育みます。
家族に共感できる家庭は、幸せな家庭です。
職場で共感できる人は、良い人間関係を築くことができます。
仕事で共感できる人は、商談相手の交渉で信頼関係を築きます。

子どもたちが大人になる頃は、eメールやテレビ会議など仕事の大半をインターネットの環境で過ごす時代になります。そこでは作業を効率的に行なうことが求められます。
しかし、一見して非効率なやり方が成果を上げる場合があります。私が運営するネットショップでは、日頃から顧客との打ち合わせをeメールで行なっています。通常は商品のお届けまでは一度も対面せず、資料請求には返信用の定型メール文を用意しています。
あるとき、学生時代に暮らしていた名古屋の街の顧客から資料請求をいただきました。
私は懐かしさのあまり、その街の思い出をメールに書き添えました。
するとお客様から返信があり、何度かメールのやりとりの後、成約となりました。
その後も、機会があればお客様との共通点を見つけ、メールに書きました。すると、高い確率で成約に結びつくことが分かりました。
私たちは、効率化を目的としてパソコンを使っているために、相手が「人」であるということを忘れがちです。けれども、効率化が当然の世の中では、かえって回り道に思えることが価値を生み出すのです。

一流ホテルのドアマンは「共感力」のプロです。利用客の顔を憶えて、その人に名前で呼びかけます。そして、顧客が次にどのような行動を起こすのかを先読みして素早くサポートします。そうすることで「あなたは、大切なお客様ですよ」という特別なステイタス感を相手に与えているのです。
子どもたちの「共感力」は、どのような働きかけで芽を出すでしょうか?

【楽育】では、親が子どもの話に共感することで、子どもに「共感力」の種がまかれると考えています。子どもの話をしっかり聞くことで、相手が何を考え望むのかが分かるようになります。
子どもは大人が自分の話を真剣に聞いてくれることを望んでいます。

親が子どもの話を聞く時は、次のように共感を示します。
(1)登場人物の名前を覚える。
子どもと一日の出来事を話すときは、できるだけ多くの名前を聞いて覚えるように心がけています。先生や友達の名前を覚えると、会ったことがなくとも親近感が湧き、話が楽しくなります。また、その名前を自分から口に出すように意識します。

(2)気持ちを言葉にする。
話しを聞きながら「つらかったね」「寂しかったね」「大変だったね」「嬉しかったね」のように相づちを打ちます。気持ちを理解して言葉にしてあげることで、相手は心の交流ができたと感じます。

(3)言葉を言い換える。
「それは○○だったから、△△なんだよね」「○○は△△ということだよね」と、より的確な別の言葉に言い換えます。そうすることで、親が真剣に話を聞いているという気持ちが子どもに伝わります。また、相手に伝えやすい表現方法を学ぶことができます。

(4)質問して考えさせる。
「○○ちゃんはその時、どうしたの?」「○○ちゃんはその時、どう思ったの?」のように質問します。人の気持ちについて考えることで、客観的に他人の立場を理解し、受け入れられるようになります。

現代では、人間だけでなく植物や動物にも共感する心が求められます。
植物や動物の立場で考えることは、「環境」について考えることです。
21世紀は個人にも、企業にも、社会全体に環境意識が求められる時代です。

人は共感した数だけ、やさしくなれるのかも知れません。



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