種まきは子どもへの働きかけ
10歳までの楽育〜第3章の1

種まきの土に、肥料はいらない。

〜「種まきは、子どもへの働きかけ」


種をまく土には、肥料を施しておく必要がありません。
自ら根を伸ばし成長する力を持っているため、肥料の力を借りなくても良いのです。
むしろ肥料にあたると種を腐らせてしまいます。

【楽育】では、種まきが「親から子どもへの働きかけ」を意味しています。働きかけとは、子どもと積極的に関わって成長を促すことです。
子どもには本来、自ら成長する力があります。親は子どもに何かを与えるよりも、子どもが持つ力を信じて伸ばしてやることが大切です。

私たち大人は、何か新しいことを始めるのに時間がかかります。前もって情報を収集し、行動計画を立てて必要な物を揃えます。それは時間の無駄と費用の浪費になることが珍しくありません。
仕事のできない人は、準備の段階から無駄が多く、なかなか実績を上げられません。
一方で仕事のできる人は、素早く準備を済ませて取りかかります。その結果、迅速に成果を挙げられます。
どんなことでも始めるのが一番難しく、やってみれば何とかなることが多いものです。
「モノがない。時間がない。やった経験がない」。
何かに取り組まない理由は、いくらでも作ることができます。
「親から子への働きかけ」に特別なモノやお金、経験は必要ありません。

【楽育】では、親から子どもへ成長の働きかけのために、次の3つのWを意識します。
(1)WITH(子どもと一緒にやってみること)
(2)WIDE(子どもの世界を広げること)
(3)WISH(子どもの明るい未来を望むこと)

娘が幼稚園児の時のことです。友だちの家に招かれてお買い物ごっこの玩具で遊びました。家に帰ると早速「私も欲しい!」と言い出しました。
そこで私は、楽しく遊べる玩具を自分たちで作ることを提案しました。
「そんなことできるの?」と娘は、半信半疑でした。
私のアイデアはチラシの商品を切り抜いて陳列し、お店やさんを作るというものでした。娘が集めている親指ほどの人形が、ミニカーで町にやって来て買い物ができれば楽しいと思ったのです。
自分のかわいい人形たちで、たくさんの買い物ができる遊びと聞いた娘は、みるみるうちに好奇心の芽を伸ばしました。
まず、大きな白紙に区割りを描いて、チラシを見ながらどんなお店ができるのかを一緒に考えました。次にお店のリストを作り、区割りの大きさを決めました。電気屋、服屋、おもちゃ屋、家具屋、魚屋、八百屋、総菜屋、ゲーム店など12のお店に絞り込みました。そして、チラシから商品を切り抜きお店に置きました。商品はセロテープを貼ってミニカーで運べるようにして遊びました。

この体験では買い与えた玩具では得られない収穫がありました。それは計画を立てて行なうこと、分類して考えること、消費行動を考えること、物語を考えることなどでした。
そして、最大の収穫はこれらとは、まるで比較になりません。それから娘は、新しくこの町に公園、学校、レストラン、プール、ステージなどを作りたいと言い出しました。
「与えられるだけでなく、自ら考えて何かを生み出すことの楽しさ」を見つけたのです。

【楽育】は、親が適切に種をまけば、子どもは自らの力で根を伸ばし、芽を出すことを信じています。

産業化社会では、
「機械を使ってモノを生産する人」と
「機械のようにモノを生産する人」を生み出しました。
「機械のようにモノを生産する人」は、次第に仕事を機械に奪われ、
景気が落ち込むと使い捨てられるようにリストラされました。

IT社会では、
「パソコンを利用する人」と
「パソコンに利用される人」を生み出します。
「パソコンに利用される人」は、やがてパソコンに仕事を奪われます。
「パソコンを利用する人」になるためには、何が必要でしょうか?

日頃から私は娘にこう言っています。
「しっかり遊びなさい。けれども、モノに遊ばれるな」。



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