10歳までの楽育〜第3章の18

しっかり張った根が、丈夫な株をつくる。

〜「自信力の種まき」


秋から春まで鮮やかな色合いで私たちを楽しませてくれるパンジー、育てやすいことからガーデニングの初心者にも人気です。
パンジーの花をたくさん咲かせるには、本格的に寒さが到来する前に根を張らせてやる必要があります。
しっかりと根を張ることで、雨風に負けない丈夫な株に育ちます。

「自信力」は、自分の力を信じて前向きに生きる力です。自分を信じることで、他人の意見に揺らぐことなく困難を乗り越えることができます。
財団法人 日本青少年研究所が、日本、米国、中国、韓国の4カ国を対象に行なった「中学生・高校生の生活と意識」の調査結果を2009年に発表しました。
それによると「自分はダメな人間だと思う」と答えた日本の中学生は、全体の56%、高校生は65・8%と他国を大きく上回りました。日本の中高生の半数以上が自信を持てない現状が伺えます。

【楽育】では、植物が大地にしっかりと根を張るように、子どもに揺るぎない自信を持たせることを大切にしています。
そして、自らの体験や失敗を克服することにより「自信力」は育まれると考えています。

子どもをほめて育てることで、自信をつけられると考える人がいます。
ほめられば、自分が相手に認められたことが自信になります。
しかし、ただほめてやれば良いというものではありません。
人にほめられることが当たり前のように育った子どもは、わがままで傲慢になったり、簡単に自信を喪失する傾向があります。

娘が通っていた保育園の同級生には、いつも親からほめられている子がいました。
何か出来るたびに「すごいね」「よくできたね」と声をかけられて本人は得意げでした。
その様子を見た私は、水族館のイベントで演技ができるたびにご褒美をもらうアシカの姿を思い浮かべました。
最初の頃は、ほほ笑ましく思っていたのですが、次第にその子の態度が気になりはじめました。何かにつけて自分の「できる」「知っている」を強調し、友だちの気持ちを考えずに「できないの?」「知らないの?」と人を見下したような態度を取るのです。
また、その子には少々のことで、プライドが傷つく癖がありました。
まるで誰かに認められていないと、心の安定が得られないようでした。

「ほめる」だけの育児では、本物の自信を得ることはできません。
また、保育園、幼稚園では自分をほめてくれる大人たちがたくさんいましたが、小学校に入学すると環境は一変します。子どもの社会では、相手をほめるどころか傷つけることで、力関係で優位に立とうとする子どもが必ず出てきます。

娘が小学校に入学して一週間ほど経ち、元気に登校する様子に、ほっとしていた日のことでした。同じ下校班になった女の子から「遊びに行っていい?」と言われました。
近所だったので、わが家に一度招いてあげたいと思いました。
ところが、翌日の下校時に思わぬ展開となります。娘はその子から突然、「私を家に入れないなら、あんたのママを刺して殺すから!」と言われたのです。さらに「こいつ、みんなで呼び捨にしよう!」と宣言されて帰ってきたのです。
私たちはこんなにも突発的に、娘が「いじめ」が対象になるとは夢にも思ってもいませんでした。

私はまず娘から「いじめ」の要因を取り除きたいと思いました。そこで、いじめられる子の傾向について調べ、10の項目にまとめました。娘と一緒に話し合いながら、一つづつ○と×をつけていきました。「だらしないところがある」「みんなと同じ行動ができない」などいくつか当てはまると思われる項目があったので、それを直すように言いました。すると、娘は落ち込んだ表情で、静かにうなずきました。
私は「もしかして逆効果だったかな?」と反省しました。

そして後日、娘と一緒に「良いところ」を探すことにしました。「元気がある」「大きな声で挨拶ができる」「玄関のくつが揃えられる」などその項目が20を越えると、娘の表情に明るさが戻ってきました。
いつも叱ってばかりの私が、娘の良い面を多く認めていることに驚き、喜んでいる様子でした。
数日後、娘は登校班で自分と同じように悪口を言われた女の子と二人で「いじめ」の原因となった子の母親のところへ直訴に行くことで、この問題を解決しました。
私は自分たちで考えて、勇気をもってやり遂げたことをほめてやりました。

子どもの行動や知識など、うわべをほめてやることは簡単にでもできます。
しかし、子どもの心に揺るぎない「自信力」の種をまくことは、親にしかできないことがあります。
子どもが自分ら認められるものを心の内に持つことが
いざという時の強い力になるのです。

冬の庭では、ほとんどの植物が休眠しています。
寒空の下でもパンジーはしっかりと根を張り、北風に揺れながらも
元気に花を咲かせています。
その愛らしく凛とした強さに、私たちは心を魅かれます。



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