10歳までの楽育〜第3章の20

霜よけにワラを敷いて寒さから守る。

〜「親切心の種まき」


草花には開花した後で種を残して枯れる一年草と、多年にわたって成育を続ける多年草があります。ハーブには多年草が多くあります。初夏から秋まで長い間花を咲かせてくれる「ブルーサルビア」も、寒くなると地上部が枯れてしまいます。
そこで、根元にワラや腐葉土などをかけておくと霜よけになり、大切な根を守ります。ちょっとした思いやりが大事な植物を守ってくれるのです。

「親切心」は、思いやりをもって相手に接する心です。自己中心性は、幼児期の心理特性と言われています。しかし、現代では大人でもワガママな人、自己中心的な人が多くいます。そのような人は、職場では他人を振り回して迷惑をかけ、皆から疎ましがられます。また、身勝手な態度を取る人は、異性からも敬遠されます。
家庭においては自己中心的な行動がエスカレートして、夫婦が離婚に至ることもあります。そして、子どもを持った時には、モンスターペアレントと呼ばれるかもしれません。
近年では事件や犯罪の判決文で「きわめて自己中心的で」という言葉が使われるのを耳にする機会が多くなりました。
ベネッセコーポレーションが、全国の公立小学校の教員を対象に行なった「第4回学習指導基本調査」では、数年前と比べて児童がどう変わってきているのかを尋ねる項目がありました。それによると、教員のうち77・6%が「自己中心的な児童が増えた」と回答しています。

子どもの心に思いやりが溢れる「親切心」の種をまくために、何ができるでしょうか?
【楽育】では、人のことを自分のことのように感じて行動するのが「親切心」の基本であると考えています。
思いやりには相手への敬意が必要です。子どもにとって最も身近なところでは、両親の関係がお手本になります。
夫婦の良好な関係は、子どもの心の安定を与え、良い芽を育みます。
ところが夫婦仲が悪い家庭では、子どもの心に歪みを与え、やがて悪い芽として言動に現れてきます。

最近気になることは、母親が夫である父親をバカにしたような仕草や態度を見せる場面を多く目にすることです。
自分の思い通りにならなければ、人前でも平気で夫を罵倒する妻。子どもが聞いている前で夫の悪口を話題にする母親も少なくありません。
実はそれが子どもにとって好ましくない種まきとなります。
放任しておけば子どもの心に根づき、母親を真似るように父親に感情を当たり散らすようになるのです。
家族のために朝から晩まで働いて生活を支えてくれている父親に対してこの態度では、他人への敬意が持てるはずもありません。
親がパートナーに対して少しでも敬意を示せば、子どもはそれに倣うはずです。
たとえば、相手に気遣いを見せる、お互いに労をねぎらう言葉をかけるなど、夫婦間で思いやりを意識して行動することが、子どもにもよい影響を与えるのです。
また、子どもが親に思いやりを見せた時は、心から「ありがとう」の声をかけることで、喜びと達成感を与えられます。
相手を思いやる喜びを知ることが「親切心」の種まきになります。

子どもが自分よりも幼い子に接する時は、「親切心」を発揮する絶好の機会です。しかし「優しさ」は、自分を犠牲にすることだと誤解している場合もあります。

娘が6歳の頃にスキーへ行った時のことです。バスの中で2歳くらいの幼児と知り合いになりました。娘はおねえちゃんの役を引き受けてその子の世話をしたり、一緒に遊んでいました。

最初はおとなしかった幼児も、少し慣れてくると本領を発揮し始めました。娘からサングラスを奪い取り、スキー場に着いても手放そうとしません。
困り果てる娘を見かねて、私は「返して!と言ったらいいじゃないか」と助言しました。すると娘は「小さい子には優しくしないといけないから、そんなこと言っちゃダメだよ」と意外な返事をしました。
その時、娘の心にあった「思いやり」は、相手のやりたいようにさせてあげること、人の気分を害さないように気を使うことでした。

自分のやりたいことを我慢して、相手につき合うのが思いやりであると子どもが信じていることに、私は自らの態度を反省しました。
家に帰り「ダメなことは、ダメ」と言ってあげることが、相手のためになることを教えました。
そして、心の中でこう思いました。
「実はいつもパパがダメ、ダメって言っているのも、思いやりなんだよ」。



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