10歳までの楽育〜第2章の3

植栽には、ふさわしい場所がある。

〜「(2)場をつくる」


植物を植栽するには、それにふさわしい場所があります。
日なたを好むものと日陰を好むもの、乾燥に強いものと弱いもの、暑さに強いもの、寒さに強いもの。
それぞれの植物の特性をよく知り、植える場所を考えます。
場合によっては新しい土を配合して、土壌改良を行なうケースもあります。
土を作ることは「場」をつくること。
「場」をつくることは、最適な環境を整えることです。

【楽育】が行なう「場づくり」には次の2つがあります。
(1)安心の場づくり
(2)興味の場づくり

「安心の場づくり」は、子どもが安心して幸せを実感できる環境を作ります。
たとえば、赤ちゃんを寝かしつける時に不安を和らげてやることができます。赤ちゃんはあたりが暗くなり、急に静かになると心細くなります。
そんな時には親が子守歌を歌ったり、優しく背中をさすってやると安心して落ち着きを取り戻します。

娘が通う保育園の運動会で「はしご渡り」の競技があった時のことです。娘は高くて狭いはしごの上を歩く事を恐れて、上に乗る事さえできませんでした。
そこで、私は自宅の倉庫からはしごをとり出し、まず地面の上に置いて自分がその上を歩いてみせました。それから、娘に同じことをさせた後で椅子を2つ用意してはしごをかけ、最初は下に落ちる練習をしました。何度も落ちる事で「落ちても大丈夫」という安心感を与えました。
そして「大丈夫だよ、やってごらん。落ちても何てことはないんだよ」と声をかけるだけで「はしご渡り」ができるようになりました。
親が安心の場を作ることで、子どもは勇気の一歩を踏み出せたのです。

「興味の場づくり」は、「おもしろそうだなぁ」「やってみたいなぁ」と子どもが思えるように、好奇心が育つ環境を親が作ります。
たとえば、子どもに本を読み聞かせる時は、まず絵本の表紙をよく見せて絵で関心を引きます。それを見て「どんなお話?」「怖いのかな?楽しいのかな?」と想像するのを促すことで、子どもの期待が高まります。

「興味の場づくり」で大事なのは、集中できるようにすることです。
現代では、テレビ、家電、車の音など、生活の中に音が溢れています。静かな時間は、私たちが意識して作る必要があります。
私は子どもの頃から「ながら族」でした。そして、今でも音楽を聴きながらエアロバイクで運動し、同時に本を読むのが日常です。仕事場でもBGMは欠かせません。それは単純な作業は心地よいリズムに乗ると生産性が上がるためです。
しかし、子どもは大人とは違うようです。音が出ていると、すぐにそちらへ注意が向いて集中力が切れてしまいます。
また、家電が発する機械の音は、気づかないうちに子どもにストレスを与えているようです。
それゆえ、わが家では子どもが生まれてから、それまでの大人の生活を見直す必要がありました。
まず、食事中に見ていたテレビを消しました。そして、家の中でいつも音楽が流れている状態をやめ、子どもの前では静寂を大切にするように意識しました。
「場」づくりのために、大人から子どものためのライフスタイルに変える必要があったのです。

子どもが安心できる環境を整えることは、子どもの心を落ち着かせること。
また、子どもが自ら感じて考える心を育むための豊かな大地となります。

《静けさや岩にしみいる蝉の声》
《古池や蛙飛び込む水の音》
かつて松尾芭蕉は、静寂とゆっくり流れる時間を楽しんでしました。

スピード社会に生きる私たちにも、それができるでしょうか?



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