10歳までの楽育〜第1章の2

大きく育った時を、よく考えてから植える。
「未来から育児を考える」


苗木を植える際は、大きく育った時のことをイメージして場所を決めます。家の近くに植えた苗木が成長して外壁を傷めたり、高い木が日光を遮り、庭が日陰になることがあります。
大きく育った木は、根を痛めると枯れやすいために植え替えを行うのが困難です。
私たちは最初に植えつける時から将来をイメージしておく必要があります。
庭は一度に完成しません。試行錯誤を繰り返しながら、少しづつ理想に近づきます。

将来を見据えた計画のことを「グランド・デザイン」と呼びます。
デザインとは、イメージすること。
デザインとは、設計することでもあります。

私は娘の送迎のために、保育園や幼稚園へよく足を運びました。
園児の母親たちと知り合って、気がついたことがあります。
それは、多くの母親が過去の体験をもとに、現在の育児を考えていることでした。
私たちが生まれ育った時代と現在には、大きな違いがあります。
それは社会の大きな枠組みが「産業化社会」から「IT社会」へ移行したことです。

「産業化社会」の特徴は、集団で大量の生産を行なうことにありました。
より早く、より正確に、忠実に物事を実行する能力が求められました。
一方「IT社会」では、より早く、より正確に、忠実に物事を実行するのは
人ではなく、コンピュータが制御する「IT機器」に求められます。
企業がIT化を目指すとき、その裏には人件費の削減という目的が見え隠れします。
ITで便利になることは、人の仕事が奪われることでもあるのです。

「IT社会」において、人に求められるのは、どんな能力でしょうか?
その答えを知るには、過去から学ぶとともに、未来から育児を考えることが重要です。
私たちが幼い頃に夢見た21世紀は、ハイテクに彩られた明るい未来でした。
現代の子どもが大人になった時の社会は、どんな姿でしょうか?

子どもたちの将来は、高齢化社会、国際化社会、循環型社会でもあります。
高齢化社会では、労働人口が減少する中での経済活力の維持、国による多大な社会保障の負担などが懸念されています。
国際化社会では、国と国との関係が緊密になり、貿易が発展します。日本企業は価格競争力を維持するため、さらなる人件費の削減を余儀なくされます。
また、循環型社会では先進国には環境政策が求められ、企業が生産性に応じた負担を税金として納めるコストが増大するでしょう。
日本企業は、安い労働力と低い税負担を求めて海外へ進出し、国内の産業は段階的に空洞化する恐れがあります。
今、多くの日本人が漠然と感じていることがあります。
それは、長く経済成長に後押しされて、ひたすら「上り坂」を歩んで来た私たちですが、今はもう「下り坂」を歩んでいるのではないかという不安です。

かつて、多くの人が「子どもは普通に育ってくれればいい」と願った頃がありました。
それは、国民の大多数が自分は中流であると意識した「一億総中流」の時代でした。
そして、現代は「格差社会」です。格差とは中流が減り、経済的に「豊かな人」と「貧しい人」に二極化することです。今後も、ますます「格差」は顕著になり、明と暗、勝者と敗者がはっきりと別れる言われます。
すでにアメリカ社会においては「格差」が大きな問題となっています。
小林由美著『超・格差社会アメリカの真実』では、《上位5%未満の層に全米の60%の富が集中しており、メーカーなどで働く中産階級の大半は「貧困層」への道を辿っている》と紹介されています。
格差社会はごく一部の豊かな人と、大多数の貧しい人を生み出すことが確実のようです。
そこでは、厳しい競争が予想されます。
競争に負けないためには、社会から求めらる力を身につけねばなりません。
【楽育】では、子どもが自立して「経済的な豊かさ」を得るための種まきをします。

幸せになるために「経済的な豊かさ」のほかに必要なものがあります。
それは「こころの豊かさ」です。
現代社会は「ストレス社会」とも言われます。私たちは、ストレスという言葉を聞くと、会社の人間関係をイメージしがちです。しかし、ストレスはもはや大人だけのものではありません。
奈良県教育委員会が、平成21年に行った《子どものストレス》に関する調査結果では、小学校で約3割、中学校で4割以上、高校生では半数以上が強いストレスを感じていることが分かりました。また、ストレスの反応は次の4つに分類されています。
(1)頭痛、体がだるい、疲れやすいなど「身体」に関するもの。
(2)いらいら、怒りっぽい、何もかもが嫌など「怒り」に関するもの。
(3)さびしい、悲しい、心配、落ち込みなど「不安」関するもの。
(4)頑張れない、やる気がしないなど「不集中」に関するもの。
ストレスは、学級崩壊、いじめ、引きこもり、非行、自殺など様々な問題を起こします。
【楽育】では、ストレスに負けず「こころの豊かさ」を育むことを目指します。

「経済的な豊かさ」と「こころの豊かさ」は、決して新しい価値観ではありません。
昭和45年、時代が求める姿を色濃く反映したCMが話題になりました。
《モーレツからビューティフルへ》(富士ゼロックス)

私たちのライフスタイルは、もう「ビューティフル」になったでしょうか?



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