10歳までの楽育〜第3章の7

古い種をまいても、芽が出ない。

〜「判断力の種まき」


数年前に収穫したマリーゴールドの種が倉庫の片隅で見つかりました。保存状態が良さそうだったので、試しにまいてみました。けれども種が古いためか全く発芽はしませんでした。
種の袋に有効期限が記されているとおり、新しい種をまくのが正解だったようです。

【楽育】では、親から子へ「種まき」の働きかけを行ないます。
しかし、時には親の古い価値観によって種がまかれることがあります。

娘の幼稚園で懇談会があった時のことです。テレビゲームが子どもに与える悪影響について先生からお話がありました。その後、保護者の話し合いでも「ゲームは良くない」「子どもにやらせたくない」というの声が圧倒的でした。
ここで私が思ったことは、大人のゲームへの価値観が私たちの子どもの頃と全く変わっていないことでした。
インベーダーゲームが、世の中に登場して既に30年以上が経ちました。
今や日本のゲームコンテンツは「クールジャパン」として、世界中から熱い眼差しを浴びる一大産業となりました。
現在までに数えきれないほどのゲームソフトが登場し、中には良質なコンテンツも存在します。それらを全て「ゲーム」として一括し「子どもに有害である」とまとめることは、古い価値観であると思います。

子どもがゲームに熱中しすぎると、いつも気になって落ち着かない「依存症」になると言われます。また、残虐なゲームをやりすぎると現実と混同するような感覚を持ってしまうこともあり得ます。このようにゲームには負の部分があります。しかし、ゲームが全て「悪」かというと、そうではありません。

ゲームはIT社会に求められる力をつけるための要素を持っています。
また、ゲームをプレイすることで脳を活性化し、集中力、反射神経、記憶力などが高まることもあります。それらの能力の向上を目的にした「脳トレ」ソフトは多く発売されています。さらに認知症の予防、改善にゲームが有効であるとして、医療や介護の現場からも注目されています。
子どもがゲームをすることで、身につくのが「判断力」です。
単純なゲームでも複雑なものでも、多くはプレイ中にとっさの対応力が求めらます。ロールプレイングゲーム(RPG)では、常に複数の選択肢が提示され、プレーヤーは考えて決めなければ先へ進めません。

自分の考えがなかなか決まらない人は、優柔不断と言われます。
優柔不断な人は、一つのことを決断するのに時間がかかるため、仕事が滞ってしまうことが珍しくありません。
「楽天市場」を運営する楽天株式会社の社内には、大きな文字で「スピード!!スピード!!スピード!!」と書かれたポスターが貼られています。これは同社の経営指針「成功のコンセプト」の一つです。

IT社会では、より迅速な判断力を持つ人材が求められます。
その理由は、3つあります。
(1)技術革新のスピードが早い。
(2)パソコンが高速化するほど、人に迅速な判断力が求められる。
(3)判断材料となる情報量が多いため、惑わされやすい。

自社の経営にゲームの要素を取り入れてた企業も存在します。ITを使ったPR支援企業の株式会社バリュープレスでは、あらゆる業務に『経験値』を設定し、達成した人にポイントが加算されます。経験を積み重ね自分をレベルアップさせるRPGが、ワークスタイルになっているのです。

一般には「テレビゲームは目に悪い」と言われます。
ところが先頃、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に、ロチェスター大学の研究者らによって驚きの研究結果が発表されました。それは、テレビゲームが微妙な濃淡の変化を視覚するトレーニングになり、視力向上に役立つ可能性があるというものでした。

私たちが今まで常識だと思っていたことが、気がつかないうちに「古い種」になってしまっていることがあります。
ゲームの問題は、ソフトの内容である「質」と、プレー時間の「量」を親が管理し見守ってやれば良いと思います。夢中になっているものを、親が子どもから取り上げるだけでは反感の芽を育てるだけです。
娘の友だちには、分厚いゲームの攻略本を読破することで、就学前に物を調べる習慣や読解力を身につけた子がいます。もしもゲームのおもしろさが無ければ、そのような意欲は芽生えなかったに違いありません。

スペインの作家フェルナン・カバリェーロは言いました。
《正しい判断力の持ち主は、太陽の持つ輝きはなくとも、星のように不動である。》

【楽育】の基本は「良い芽を伸ばし、悪い芽を摘む」ことにあります。
何かを判断をすることは、選択肢の中から道を選ぶことです。
私たちの日々の判断の積み重ねが、
子どもの成長を導く道しるべになるのです。



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