10歳までの楽育〜第3章の4

肥料に頼りすぎると、育む力が弱くなる。

〜「創造力の種まき」


小さな鉢で植物を育てる時は、土の養分が少なめになります。それを補うために、肥料を多く与えすぎて失敗することがあります。
花木にとって肥料は大切な栄養です。しかし、必要以上に与えすぎると肥料やけを起こして根が傷み、植物を枯らせます。
また、肥料の成分で土の中の微生物が失われると、有機質の分解が行なわれません。
その結果、固くて病気や害虫が発生しやすい土壌環境になります。

「子どもに何かを学ばせるならば、早ければ早いほど良い、多ければ多いほど良い」と考えて、早期教育に熱心な親が現代では珍しくありません。
サンケイリビング新聞社の園児とママの情報誌「あんふぁん」編集部が、読者を対象に習い事に関するアンケートを行ないました。それによると、全体の約7割の園児がおけいこごとや習い事(通信教育含む)をしており、毎月の出費の平均は9千183円になるそうです。

娘の通う幼稚園には、水泳、硬筆、英会話、ピアノ、塾など毎日のように習い事をしている子もいました。
私たちは子どもに、与えることばかりを考えていないでしょうか?
人から教えられたことを理解し、自分のものにすることは大切です。しかし、いつも人から課題を出されてばかりいると、与えられることに慣れてしまいます。そのことによって自分の意思で行なう主体性の芽が伸びず、消極姿勢の芽が育まれます。
常に受け身でいれば、新しいことを発想するという意欲も育ちません。

娘の幼稚園の同級生に1日に何時間も塾で勉強している子がいました。礼儀正しく言葉がはっきりしており、親たちの間でも評判がよい子でした。
しかしある日、その子が遊ぶ姿を見ていて不自然に思ったことがあります。子どもたちは地面に水で丸を描き、リズムに乗って丸から丸へとジャンプしていく遊びをしていました。皆がいきいきと楽しんでいる中で、その子だけが消極的なようでした。様子を見ていると、その理由が分かりました。その子は誰かがやった後で、ただそれをマネるだけでした。自分で丸を描いたり、飛び方をアレンジして遊びを創り出す意欲が無かったのです。

これからは、自分で工夫して新しいものを作り出す「創造力」が求められます。
産業化社会では、同じ作業の繰り返しを速く正確に行なう力が求められました。やがて同じ作業の繰り返しを速く正確に行なう主役は、人間から機械へと交代してゆきました。
IT社会では、同じ作業の繰り返しを速く正確に行なうのはコンピュータが最も得意とします。人間が行なう仕事には、コンピュータにできない能力が求められます。
その答えのひとつが「創造力」です。

子どもたちに「創造力」の種をまくため、私たちにできることは何でしょうか?
【楽育】では、幼い頃から形のないもの、答えのないものに多く触れさせる機会をつくります。自らの手で試行錯誤して何かを生み出すことが「創造力」を育てるのです。
幼児期には、遊び方が制限される玩具よりも、自由な発想で遊べるものを選びます。
積み木、ブロック、ねんど、工作などは、子どもが自分で考えながら「創造力」を伸ばすのに最適です。わが家では、ダンボール、牛乳パック、空き箱、ペットボトルなど家のゴミや不用品を捨てずに、工作の材料として利用します。子どもはそれらを使って自由な発想で、家、船、カメラ、ロケットなどを作って楽しんでいます。
私は子どもと一緒に工作を行うことで、あることに気づきました。
親が工作に参加して自分の作品を作ることで、子どもの作品にも影響が出て、創作の質が高まりました。
親の創造力を発揮して示す事が、子どもの創造力を伸ばしていたのです。

「創造力」といえば、ゼロから何かを生み出すようなイメージがありますが、実はそうではありません。
かつて私は、広告制作会社の制作現場で仕事をしたことがありました。会社には膨大な本や資料があり、デザイナーやコピーライターはその中から、他人の作品のイメージを組み合わせることで新しい表現を生み出していました。
新入社員の頃は、クリエイターはゼロから発想するものだと思っていたので、これには驚きました。

豊富な経験や知識によって、ひらめきが生まれ、「創造力」が芽生えるのです。
受け身に慣れさせずに、子どもに新しいことを経験させること、工夫させること、よく考えさせること、何かにチャレンジする意欲を育むことが、創造力の種まきになります。

子どもと一緒に工作をしていて、思い出したことがあります。
幼い頃の私は、友だちが持っていたボードゲームが欲しくてたまりませんでした。
しかし、簡単には買ってもらえず、自分で作ってみることにしました。
ゲームのルールを考え、何日もかけて紙でコマを自作して完成させました。
もしかしたら、あの時の創造意欲が
現在の仕事の礎になっているのかも知れません。



  前のページヘもどる