10歳までの楽育〜 第2章の2

時間をかけるほど、喜びは大きい。

〜「(1)時間をつくる」


ガーデニングには、2つの楽しみ方があります。
じっくりと時間をかけて花を楽しむ方法と、手軽に楽しむ方法です。
じっくりと時間をかけて楽しむ方法は、土づくりから始めて種をまき、植物を育てます。
手軽に花を楽しむ方法は、お店で花の苗や鉢花を買ってくるものです。種から育てるよりも苗を買った方が失敗がありません。また、つぼみをつけている鉢花を買ってくれば、すぐにでも花が咲き、水やりだけの手間で済みます。
どちらの場合も花を楽しむのは同じですが、最初から自分で手をかけて育てた方が喜びが大きいのは、なぜでしょうか?

【楽育】では、育児においても自分の時間をかけた分だけ、大きな喜びを収穫できると考えています。
また、子どもの心に豊かさと安定を求めるならば、親子で過ごす時間を短縮することはできません。

《私たちは子どもに何が残せるだろう。モノより思い出。》
これは平成11年に日産自動車が行なった広告キャンペーンのキャッチコピーです。
バブルの時代を経験した人ならば、きっと心に残った広告でしょう。
かつて「忙しいことは、素晴らしい」という考えを持つ人が多くいました。当時、忙しいことは仕事ができる人の代名詞であり、ステイタス・シンボルでした。
現在でも忙しさを演出することで自らの安心感を得ようとする人は、珍しくありません。
けれども「忙しい」の「忙」は、心(りっしんべん)を亡くすと書きます。
心がなくなった状態が、果たして豊かでしょうか?

私の知り合いに、子どもを遅くまで保育施設に預けている母親がいます。
朝早くから夜遅くまで懸命に働いて稼いだお金を、ピアノ、英会話、水泳、学習塾などの習い事に充てています。
その母親の口癖は「忙しい」と「子どものため」です。しかし、私はお金をかけることが、本当に子どものためになっているとは思えません。
親子の時間を十分に過ごさず、育児を外注されて育った子どもは「見たい、聞きたい、遊びたい」という子どもらしさが、欠けているように感じます。
土をよく耕して、全体を支える「根」をゆっくり育てる時期に、早く立派な花を咲かせることばかりを考えても上手くいくはずがありません。
私たちは今、子どものためにお金をかけるのではなく、たっぷりと自分の時間をかけるべきなのです。

育児にもっと多く時間をかけたいと思う人がいます。
忙しくて、いつも時間が足りないと感じる人がいます。
多くの人が時間をかけたいのに、時間が足りないというジレンマに陥っています。自分にとって本当に大切なものを考えて時間と付き合い、余分なものを捨てる覚悟がなければ、そのジレンマから抜け出すことはできません。

私の娘が誕生した時のことです。それまでは、借家を事務所に夫婦で印刷物のデザインやウェブサイトを運営する仕事をしていました。
そこで私たちは、子どもが誕生した後も家で仕事を続けるか、他でオフィスを借りて仕事をするかという選択を迫られました。
結局、私たちは家で仕事をしながら育児をすることを選びました。

最初は育児と仕事が両立できるのかが半信半疑でした。
最大の不安は「子どもがいる場所で、仕事に集中できるのか?」ということでした。
そこで、子どもが起きている時間は頭を使わずに行なえる作業を中心に、そして眠った後で考える仕事を行ように工夫しました。

家で仕事をすることを選んだおかげで、私は多くの時間を子どもと過ごすようになりました。そして、自ら子どもに様々なことを教えるのが生活の一部になりました。
子どもと一緒に何かをしていると、親子だからこそ分かることや共感することがあります。しかし、子どもと接していなければ、その素晴らしさに気づくことはないでしょう。

子どもが親に一番望むものは何だと思いますか?
それは、決してお金では買えません。

マスターカードには、世界97カ国以上に展開しているテレビCMがあります。
そのキャッチフレーズは《プライスレス》。
お金で買えない価値があることが表現されています。
もし、子どもたちに聞いたら、こう答えるかもしれません。

《プライスレス》・・・パパとママとの時間。



  前のページヘもどる