10歳までの楽育〜第4章の14

風通しが悪いと病気になる。

〜「子どもを追いつめない習慣」


園芸店で手に取ったラベンダー苗を、植える場所も考えずに衝動買いしてしまいました。持ち帰ってみると案の定、適当な場所が見つからず、仕方なく狭い場所へ植えました。
すると株が蒸れて、買ってきた苗ばかりか隣の苗までも傷めてしまいました。
株間を詰めすぎると風通しが悪くなり、病気が発生しやすい植物もあります。
大きくなった時のことを考えて、ゆとりを持たせて植えるべきでした。

現代では、子どもたちを取り巻く世界が狭く窮屈になっています。
保育園や幼稚園はどこも満員で、保育士の負担は大変なものになっています。
ある時、娘から保育園の先生の話題が出ないことが気になって、理由を聞いてみました。
すると、先生に話しかけても「ああ、そうなの」と、あまり相手にしてもらえていないことが分かりました。
また、子ども同士の関係にも難しい面があるようです。娘はいろんな人と遊びたいようですが、一人の子と仲良しになると、束縛されて他の子と遊ばせてくれないことを悩んでいました。また、女の子は2人だけの世界をつくりたがり、2人1組になると他の子を仲間はずれにしたがる傾向があるようでした。

かつては、多くの家庭に子どもの話をゆっくり聞いてくれる祖父母の存在が在りました。
しかし現代の核家族では、祖父母は同居していません。また、母親はいつも忙しく、父親は帰宅が遅くて話しが全く出来ないことも珍しくありません。
子どもたちが疲れているように見えるのは、心にゆとりがないことや対人ストレスが原因であるように思います。

幼い頃から親の期待を背負うことが、子どものストレスになる場合もあります。
まだ幼稚園だというのに遅くまで学習塾に通う子や、習い事が多すぎてほかの子と遊ぶ暇がない子も多くいます。
最近は母親だけでなく父親も育児に関心を持つ人が増えています。以前は、子どもの教育といえば母親の役目でした。父親はやさしく見守る立場にあることで、そのバランスが保たれていたのです。しかし、最近では父親までが教育熱心になることが珍しくなく、両親からプレッシャーを受けて子どもは追いつめられます。

【楽育】では、大人が子どもの気持ちを理解し、追いつめないことを習慣にします。
そのためには、子どもの話をしっかり聞いて、まずは安心させてやることが必要です。
わが家で子どもを追いつめないために大事していることは、夫婦がお互いの役割を認識することです。
たとえば、子どもが何か素晴らしいことをした時には、ふたりから思いきりほめてやります。反対に子どもを叱らなければならない時は「叱る役」と「話を聞く役」を両親のいづれかが担うように心がけています。
親が子どもを叱る時「2度としないように」という思いから、感情的になることは珍しくありません。しかし、叱られた子どもは追いつめられると頭の中が真っ白になり、思考がが停止してしまいます。
すると「何が原因で叱られているのか」「これからどうすれば良いのか」ということを冷静に考えることができません。「叱られた」という印象だけが子どもの心に刻まれると、次は別の問題が起こります。
それは「親にバレなければいい」という気持ちが芽生えることです。
間違った価値観を植え付けないためにも、子どもを追い込まないように誰かがフォローしてやらねばなりません。

わが家では、父親に叱られた娘が泣きながら母親のもとへ行って、話を聞いてもらうことがよくあります。母親は子どもを抱いたまま「次は気をつけようね」と優しく声をかけています。
その立場が逆になる場合もあります。ある夜、娘がなかなか寝つけず母親をわざと困らせる態度をとったことがありました。母親に叱られた娘は、泣きながら私のもとへやってきました。私は子どもから話を聞きながら、自分はどういう気持ちだったのか、また相手はどういう気持ちだったのかということを娘と話しました。そして、自分で納得ができたら「一緒に行ってあげるから」と母親のもとへ謝りに行くように勧めました。

本来ならば、このような役目は祖父母が担っていたものだと思います。核家族の家庭では、誰かが子どもの味方になり、支えてやることが必要です。
私は子どもを叱る時でも、できるだけ心にゆとりを持つように心がけています。
また、子どもを従わせるのではなく、何が子どものためになるかを考えることを忘れないように心がけています。
そのためには、どうすれば子どもが冷静に思考できるか、どうやって許すかと言うことまで考えながら、叱ることもあります。

経営の神様 松下幸之助は、こう言いました。
《叱ってくれる人を持つことは、大きな幸福である。》

叱られて真っ赤な顔をした子どもを前に
私はうちわで風を送るように、そっと胸の中からエールを送ります。
「止まるな、いじけるな、逃げるな、素直になれ、冷静に考えろ」。



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