10歳までの楽育〜第4章の12

芽かきをしなければ、小芋ばかりができる。

〜「子どものために選択する習慣」


ジャガイモを上手に育てるには「芽かき」が欠かせません。種芋を土に植えると、そこからたくさんの芽が出てきます。「芽かき」とは、その中から1、2本を残して不要な芽をつむ作業のことです。「芽かき」をしない場合は、イモの数は増えますが栄養が分散します。その結果、収穫するイモがどれも小粒になってしまいます。
「芽かき」を行なうことは、大きく育てるイモだけを選ぶことです。

最近のビジネスでは「フォーカス」という言葉がよく使われるようになりました。もとの意味はカメラでピントを合わせるものですが、ビジネスでは「本当に必要なものだけに絞る」という意味で使われます。
ITビジネスのスピード感覚は「ドッグイヤー」と言われます。これは普通は7年で変化するような事が、わずか1年で起こる事のたとえです。
子どもの成長はたいへん早く、適切な時期に適切なことを学ばなければ、機を逃してしまいます。
【楽育】では、成長する芽を残して不要な芽を間引くように、親が子どものために選択することを習慣にします。

娘の幼稚園では、4歳の頃からピアノ、バレエ、硬筆、水泳、など様々な習い事に挑戦した友だちがいました。けれども、どれも長続きがしませんでした。それを知った同級生の母親の中には「あの子は辛抱が足りない」とか「何をさせても根気がない」と陰口を言う人もいました。
習い事は一度はじめると、すぐにやめさせることが困難です。なぜならば、昔から『石の上にも3年』と言われるように、辛抱できる人が尊敬される一方で、すぐやめる人は軽視されるからです。
しかし、本当に重要な事は他人からの評価ではありません。何が子どものために最善かという判断をするためには、いろいろと試して見ることも必要です。本人に合わなければ迅速に退くという判断は、決して間違いではないと思います。
私は幼い頃に多くの習い事に通った経験があります。しかし、自分のために身に付いたと思えるものは一つもありませんでした。当時の私は何に対してもやる気や興味がわかず、ただ時間を浪費していたのです。
そこでわが家では、娘に習い事をさせるならば、本人が興味を持っていることを条件にしました。そして、体験会に参加したり人から話を聞いて、幼稚園の年長から始めたのが「ジャズダンス」でした。
娘は以前から歌ったり、踊ったりすることが大好きでした。
ジャズダンスを見学に行くと飛び入りでレッスンに参加し、フルタイムを受講しました。そして、終わった後の表情には「やってみたい」という意欲が溢れていました。
ジャズダンスのレッスンでは先生が教えることを理解して、すぐに表現することが求められます。普段から人の言うことを理解をするのが苦手で、時間を要する我が子には、難しいように思えました。
しかし、私は好きなことがそれに勝ることを信じて、娘を応援することにしました。
知人の中には「ダンスを習って何になるの?」と不思議そうにする人もいました。
けれども、私は自分が選んだことに迷いは感じませんでした。
「知識」や「技能」は、本人のやる気次第でいくらでも身につけられます。しかし、物事に取り組む意欲は、簡単に身につけることができません。
最初にまず、子どもの意欲の芽を伸ばすことを考えたのです。
私が期待どおり、ダンスを始めてから娘の積極的な面は、ますます際立ってきました。
初対面の人たちの前で、物怖じすることなく自分の考えを発表したり、質問する様子を見ていると、良い芽がぐんぐんと伸び始めたと感じました。
そして、私が何より嬉しかった収穫は、生き生きとダンスを楽しむ娘の姿でした。

わが家の家庭学習は、子どもが何を苦手としているのかを見つけることに力を注ぎます。私が見たところ、娘が勉強している内容の約9割は既に理解できていました。毎日、理解できているところを繰り返し学習することに多大な時間を費やしていたのです。
娘は机に向かうという行為そのものが、勉強であると信じて疑いませんでした。しかし、既に理解できている勉強に多くの時間をかけても無意味です。
そこで私は、間違った箇所だけを集めて問題を作りました。また、「できるところはもう、やらなくていいよ。もっと知らないことを一緒に勉強しよう」と言いました。
そして、学校の教科書にこだわらず、新聞や雑誌、舞台鑑賞など様々なものを教材にして
知的好奇心を広げられるように心がけています。

どの職場でも自分の仕事内容や成果は棚上げにして「私は頑張ってる。精一杯やっています」と主張する人がいます。また「世の中には無駄なことなどない」と言う人もいます。
しかし、子どもたちが何を学び、どの道を進むかによって行き先は変わり、その未来も変わるはずです。

世界的に有名なパソコンメーカー、デル社の創業者マイケル・デルは、次のように語っています。
《することを決めるのは簡単だ。難しいのは、しないことを決めることだ》

日々の暮らしの中で子どもの様子をよく見て、
最善の道を選んで導いてやることは、
私たち親にしかできないのではないでしょうか。



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