10歳までの楽育〜第3章の17

タケノコは、一日で1メートル以上も伸びる。

〜「競争心の種まき」


昔から「子どもはタケノコのようにすくすく育つ」と言われます。
近所の竹やぶの近くを散歩をしていた時、昨日見たばかりのタケノコが急に大きくなっているのに気がつきました。調べてみるとタケノコは一気に成長するもので、1日で1m以上も伸びることがあるようです。

育児において、子どもが急成長するためには外からの力ではなく、心の内面からの強い力が必要になります。
「競争心」は、ほかの人と切磋琢磨しながら勢いよく成長する力です。
しかし、現代では人と競争させて成長を促すような教育はタブーとされています。
運動会の徒競走では順位をつけず、通知表の評価は曖昧で、学芸会で劇をした時などは、桃太郎が一度に5人も登場して驚かされました。これらは、弱者を思いやって優劣をつけない方針であるそうです。
子どもたちが社会人となった時、これで本当にやっていけるのでしょうか?
まるで暖かい温室から急に寒空に出されて「がんばれ」と言われているように思えます。

弱肉強食の自然界がそうであるように、現代社会は競争で満ちてます。将来、どのような職についても他者との競争を避けることはできません。
ネットビジネスでは「ウィナー・テイク・オール」(一人勝ち)という現象がよく起こります。これは、あるマーケットやサービスにおいて勝利したものが全ての利益を獲得するという意味です。
たとえば、オークションなら「ヤフー」、本を買うなら「アマゾン」、ショッピングモールなら「楽天市場」というように、「勝ち組」になれば絶対的な成功が見込めます。
しかし、2位以下になると名前も知られないことが、珍しくありません。
IT社会では、厳しい競争を勝ち抜いたものだけが利益を得るのです。

娘が保育園にやっと慣れた頃、私はあることに気がつきました。それは人に負けまいとする気持ちが見られないことでした。友だちは鉄棒やボール遊びができるようになったり、文字が読めるようになっても娘は全く興味を示しませんでした。
親の方が焦って運動や文字を教えようとしました。しかし、本人に学ぼうとする気持ちがないためか、手ごたえがありませんでした。

小学校に入学した娘は、生き物に興味を持つようになりました。学校でバッタやおたまじゃくしを捕まえては、家に持ち帰って飼っていました。
ある夜、白いおたまじゃくしが発見されたニュースが、ネットで話題になっていたので娘に見せました。すると「自分も白いおたまじゃくしを見つける!」と言い出しました。
「白いおたまじゃくしは2番になるので、金色のおたまじゃくしを見つけたら珍しいかもね」と私は笑いながら冗談を言いました。
そして翌朝、朝刊を手にした私は、思わず大声を上げました。金色のおたまじゃくしが、すぐ近所の田んぼで発見されたのです。しかも、見つけたのは娘のクラスメイトで、虫取り仲間の男子でした。
写真を見せて記事を読んで聞かせると、娘は喜ぶどころか地団駄を踏んで悔しがりました。それから「私もすごいのを探す!」と意気込んで採集に行きました。
けれども、珍しい生き物が簡単に見つかるはずもありません。気持ちが納まらない娘はスケッチブックを出して来ました。そして、自分で珍しいおたまじゃくしの色や模様を想像しながら何匹も描き始めたのです。
それからは、生物の観察にも変化が見られました。色や形を詳細に観察し、図鑑で違いを調べるようになりました。

娘には人と競争する気持ちが無いと思っていましたが、好きなことで「競争心」が芽生えたことで「想像力」や「好奇心」も大いに刺激されたようです。
それまでの私は無意識のうちに娘に対して「人と同じように、自分もできるようになれ」というメッセージを送っていたように思います。
運動や勉強など大人から見て、それが出来たら人に誇れるようなことを選んで、子どもに押し付けていたのです。
私は子どもに競争心を与えようとするのではなく、子どもの中にある競争心の芽を引き出すように働きかけるべきでした。

【楽育】では「競争心」の種まきのために2つのことを心がけています。
(1)子どもの心に競争心が芽生えるのを待つ。
(2)大人が競争社会で頑張っている姿を子どもに伝える。

たとえば私が本を読んでいて、子どもから「何読んでるの?」と聞かれた時に、「競争心」の種まきを意識します。
本の知識を得て自分のものにすることで、競合相手よりもお客様に喜ばれる商品を作りたい気持ちを素直に話しています。
「もし、おいしいガムと普通のガムがあったら、どっちが欲しい?」と私から聞くと
「そんなの、おいしいガムに決まってるよ」と娘が答えました。
そこで私は、続けました。
「パパの仕事ではガムは作ってないけど、もっとお客様に喜んでもらうために、もっとがんばることが大事なのは同じだよ。おまえにもがんばっていることが何かあるかな?」
すると、元気いっぱい返事がありました。
「ある!」。

「競争心」は相手を負かすためのものではありません。
それは自らを磨く、向上心の実りをもたらすものです。



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